第1章 入学式
少し前までは満開だった公園の真ん中にそびえ立つ一本の桜。
その横を通り抜ける少年が一人。
ちなみに『通り抜ける』というのは、その少年が走っていることを示す。
通学鞄と思われるスクールバッグを右肩にかけ、学校指定の真新しいと思われる制服を身にまとい校章を煌めかせている。
傍から見れば、その姿から新入生ということがわかりどこか初々しさを感じるだろう。
確かに初々しさは感じられる。
けれどその少年の横を通ったものは皆訝しげな表情をし、少年を見る。
少年の異変に気づいているからである。
そんな目を向けられていることを知っていながら意に介さずただただひたすら走る、
少年こと辻 湊人である。