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黒子のバスケ*Short Stories3

第10章 密かな文通*実渕*


あの内容にそんなに返すことなかったと思うけど…。

首を傾げながらメモを開くと、ずらりと並んでいたのはこの時間のやり取り。

会話が目に見えて、ついつい笑顔が溢れてしまう。

最後の部分に目をやると、玲央の綺麗な字で書かれた言葉で終わっていた。

「放課後が楽しみだわ。そういえばさっき書き忘れたけど、私はいつも素敵なものが見えているのよ。授業中にぼんやり窓の外を眺めたり、眠気を堪えようとしてこっくりしたりしているあなたを可愛いと思っているの。」

読んだ瞬間、顔が一気に熱くなって両手で頬を隠した。

先生にこんな顔見られたらまずい。

私はそのまま俯いて今度は緩む口元を隠した。

玲央が後ろの席で良かった。

こんな顔を正面から見られるの恥ずかしすぎる。

気を抜いている姿を見られていた羞恥心と、「可愛い」と言われたことに対する照れくささで心中は複雑。

すると授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響いた。

恐る恐る後ろを振り返ると、玲央は満面の笑みを浮かべていた。

「…最後にあんなこと書くなんてずるいよ。」

「あら。事実を素直に書いただけよ?ここは私の特等席なの。…さっきもの耳が赤くなっていて、可愛かったわ。」

「そういうこと言わないでっ!」

クスクス楽しそうに笑う玲央は少しあどけなくて、その笑顔を見ていたら混ざっていた気持ちはシンプルになった。

笑顔を見ただけで、文字のやり取りをしただけで、胸に込み上げるのは「好き」だという想い。

「ごめんなさい。今日はご馳走しちゃうから許してくれないかしら?」

「…別にいいよ。玲央とデート出来るから嬉しいもん。」

すると今度は玲央が顔を真っ赤に染めた。

真正面から照れた顔が見られたから、後ろから盗み見られてたことは許しちゃう。

私はメモをきれいに畳んで手帳のポケットにしまった。

何気ない言葉のやり取りですら、私にとって宝物だから。
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