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黒子のバスケ*Short Stories3

第9章 その出会いは必然か偶然/黄瀬*青峰


< 君に恋をした日 / 黄瀬 >

部活が休みの日に急に入った撮影。

しばらくバスケばかりだったし、息抜きになるかと思って久々の仕事を楽しんでいた。

撮影が終わり帰る時に隣のスタジオを覗いた瞬間、瞳に飛び込んできた彼女。

時間が止まったような感覚に陥った。

カメラに向けられていたのは、作られた笑顔でも自分を一番美しく見せようとする表情ではなかった。

シャッターが切られる度に見せる表情はころころと変わり、どの表情にも惹き付けられた。

特別背が高いわけでもなく、大勢いるモデルの中でずば抜けて美人というわけでもない。

なのに、その笑顔が心に残って忘れられなかった。

どうしても彼女のことを知りたくて、顔馴染みだったカメラマンに尋ねてみた。

「あの子…初めて見たんスけど。新人さんスか?」

「あぁ!あの子読者モデルの子だよ。いい表情してくれるんだよね。…黄瀬くん、気になるの?ちょっと話してみる?」

にやりと片側の口角を上げたカメラマンが休憩中の彼女を手招きし、呼んでくれた。

距離が縮まると彼女の光はさらに眩しくなって、キラキラ輝いているように見えた。

カメラマンが俺を紹介すると、彼女はぱっと明るい笑顔を向けてくれた。

「初めまして!です。黄瀬さんとお話出来るなんて光栄です。」

「そんな大したやつじゃないっスよ?さん、すごく良い表情で惚れ惚れしちゃいました。」

口から出た言葉はお世辞でもなく、本当に感じたありのままの気持ちを伝えた。

「黄瀬さんにそう言ってもらえるなんて…嬉しい。あ、あの!私、黄瀬さんと同い年なので敬語じゃなくて大丈夫です。」

「そうっスか?てか、よく知ってるっスね。」

「私高校でバスケ部のマネージャーしてるんです。海常の黄瀬さんは有名ですから。」

「マジっスか!?うわー!何か嬉しい!どこの高校なんスか?」

彼女が俺の質問に答えようと口を開いた瞬間に、マネージャーが俺を呼ぶ声にかき消された。

「涼太!いつまで待たせるんだー!」

「うわ!また怒られる!じゃあ、またね!っち!」

慌ててスタジオを飛び出す俺に、笑顔で手を振ってくれた彼女はやっぱり可愛くて。

今日、俺は君に恋をした。
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