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黒子のバスケ*Short Stories3

第8章 甘いあなたの味*黒子*


一度だけキスをした。

本当に触れるだけの一瞬のキス。

彼の顔を見つめれば、白い肌が真っ赤になって優しく微笑んでくれた。

ぎこちないその感触に驚きつつ、「キス」という触れ合いをしたことから、また一歩進めたような気がした。

でもね、キスというものに意味を感じたかと言われれば疑問。

だって唇が重なったの1秒くらいだったもん。

だから、余裕が出来る2回目以降になったらまた変わるのかなと思ってた。

なのに。

1ヶ月前にファーストキスという夢の時間を味わってから、一度もその機会が訪れない。

自分から言い出すのも恥ずかしくて、言えずにいたらもう1ヶ月。

「火神くん…。私今後テツくんとキスできない気がしてきた。」

ランニングからいち早く戻ってきてストレッチをする火神くんはよき相談相手。

ついに痺れを切らして火神くんに助けを求めた。

「黒子がお前にキスしたってだけでも、相当だと思ったけどな。」

「何でキスしてくれないと思う?」

「わかんねぇよ。…まぁ、あいつベタベタするタイプじゃないだろ。焦んな、焦んな。」

わかってるけどね。

彼女になれただけで幸せなはずなのに。

手を繋ぎたい、抱き締められたい、キスされたい。

友達だった時には生まれなかった願望。

はぁ…と溜め息をつくと、火神くんはぽんと私の頭に手を置いた。

「がこんなに積極的とは思わなかったわ。」

「…!私ががっついてるみたいに言わないでよ!」

火神くんの肩に至らない力でグーパンを入れたところで、テツくんがやっと戻ってきた。
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