第5章 1月12日*花宮*
「お誕生日おめでとう。」
プレゼントを手渡されてそれを受け取った時、の手の冷たさが一緒に伝わってきた。
自分の誕生日でもないのに、何でそこまでやれるんだよ。
欲しいもの考えて、誕生日の予定開けて、寒い中外で待って。
包みを開けると、丸みがあるケースが入っていて、開けると細く黒で縁取られた眼鏡が入っていた。
「真よくパソコン使うって言ってたから…度は入ってないけどパソコン用のやつだよ。」
確かに試合のスカウティングや情報収集でよく使うとは言ったけど、そんな些細なこと覚えてたのか。
何なんだ、この気持ち。
自分のために好きな女がここまですることを、嬉しいと思ってしまう。
胸にじわじわ込み上げてくる暖かさ。
「…気に入らなかった?」
心配そうに様子を窺ってくるが愛しくて、言葉よりも先に抱き締めた。
身体もすっかり冷えきっていて、せめて少しでも暖かくなるように自分の身体を全て使って包み込んだ。
「…そんなわけねぇだろ、バァカ。」
今出来る精一杯の言葉で気持ちを伝えると、は腕の中から俺を見上げてまた笑顔を見せた。
「そっか…。良かった。」
その笑顔でまた胸の中が暖かくなって、一瞬だけ唇を重ねた。
当然だが唇も冷たくなっていたが、は突然のキスに驚いて目を見開いて頬を染めていた。
「ほら、行くぞ。どっかで祝ってくれるんだろ?」
「…うん!」
早く暖かいところへ連れていってやりたくて先を歩けば、はすぐに追い付いて、俺の手を握り隣を嬉しそうに歩いている。
自然と口許が緩んでしまうほどの感情の正体に、俺はもう気付いている。
認めたくなかっただけだ。
「幸せ」だ。
お前が俺を変えた。
責任とって、これから先も俺の隣にいろよ。