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黒子のバスケ*Short Stories3

第50章 眠り姫がくれた奇跡*高尾*


部活帰りの夕暮れ時。

家とは反対方向にチャリを飛ばして、彼女の元へ向かった。

「ちゃーん。」

ひょこっと部屋の中を覗くと、いつもの場所に彼女はいた。

日に当たっていないからか、貧血気味ってよく言っていたからか、透き通るような真っ白な肌。

頬をつんつん、と突いて、隣に腰掛けた。

「今日も暑かったぜー。チャリ全力で漕いだから、また汗かいちゃったし!臭くても勘弁してな?」

もうすぐ夏休みが終わってしまうから、今よりもここに来られる日が少なくなってしまう。

自分がいない時に奇跡が起こってしまったら、嬉しいけどどこか寂しい。

我儘だけど、やっぱりその瞬間には自分も立ち会っていたいと思ってしまう。

「今日も書いとくな。」

彼女の枕元に置いてあるノートを開いて、最近あったことをメモ書きするのも習慣になった。

今日は先輩たちが部活に顔を出してくれて、刺激になった。

後輩たちは圧倒されてたけど笑。

先輩たちもちゃんに会いたがってた。

ちゃんがいないと、やっぱり何か物足りないってさ。

「俺も早く会いてぇよ、ちゃん。」

ぼそりと呟いた一言は静けさに溶けて消えていった。

目の前にいる彼女は真っ白な病室のベッドに横たわっている。

ただ眠っているかのように、規則的な呼吸を続け、目を閉じている。

声が聞きたい。

笑っていても怒っていても泣いていてもいい。

目を覚ましてほしい。

ずっとずっと願い続けているこの願いは、いつになったら叶うんだ。
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