第48章 二人だけの夏が始まる*小金井*
練習が終わってもまだ明るい帰り道。
「じゃあ、また明日!」
そこから各々別れると、残るのは私とコガ先輩の二人になる。
「俺らも行こっか。」
「はい。」
先輩が笑顔を向けてくれると、どんなに疲れていても私もつられて笑顔になる。
「それにしても日に日に暑くなってくよね!あー、やんなっちゃうよ。」
「そうですね…。もうすぐ日が暮れるのに、この湿気もどうにかならないもんですかね。」
湿気のせいで重たい空気がじわじわと身体に堪えて、夕方なのに汗が滲んでくる。
すると、コガ先輩が視界の先にいつもの通り道にあるコンビニを捉えた。
「あ、!コンビニ寄って行かない?アイス食べようぜ!」
「コガ先輩、ご馳走様です!」
「え!?俺の奢り!?」
腑に落ちない様子でむっとするコガ先輩に、私は敢えて丁寧に言葉を返した。
「私、今日コガ先輩がスポドリ入ったジャグ倒してくれたおかげで、もう一回作り直しました。」
「…奢らせていただきます。」
「やったぁ!」
先輩とこんなやり取りをするなんて、普通なら有り得ないけれど、コガ先輩となら有り得てしまう。
先輩たちの中で一番最初に声を掛けてくれたのはコガ先輩で、その親しみやすさからすぐに打ち解けることが出来た。
来年の夏はこんな風に一緒に帰ることが出来なくなってしまうと思うと切ないけれど、今は一先ず忘れておこう。