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黒子のバスケ*Short Stories3

第47章 きっかけはラブソング*宮地*


連れて来られた場所は屋上で、放課後だからか人気は全くなかった。

自分から切り出すのは何だか恐くて、宮地から切り出してくれるのをじっと待った。

「…悪い。」

私の手首から宮地の手の感触が無くなって、顔を上げるとまた今まで見たことのない宮地がいた。

眉を寄せて切なげな表情を浮かべて、真っ直ぐに私の瞳を捉えた。

「…さっき何で嘘ついたんだよ。」

「え…?」

「目、逸らしただろ。俺に何かあるのかと思った。」

嘘の笑顔はあっさりと見破られていて、でもそれだけで私を気にかけてくれたことは偶然の優しさではない気がした。

二人で好きだと言った、あの曲のように感情を吐き出して素直になってしまおう。

「…宮地が他の女の子とも盛り上がってたのが何か寂しかった。私だけしか知らないと思ってたから…。」

気持ちを声に出してしまうと、現実味を帯びてしまって急に恥ずかしくなった。

「…ごめん!今の忘れて!」

我に返って誤魔化そうとしたけれど、今度は腕を掴まれて宮地の胸に飛び込んでしまった。

「忘れねぇよ。」

思いがけない言葉に驚き顔を上げると、頬を赤くして顔を歪めた宮地がいた。

「…どうして?」

私が投げかけた疑問に答えにくそうに顔をしかめて、一息ついて宮地は抱きしめる腕の力を少し強めて呟いた。

「…嬉しいと思ったから。」

具体的なあの一言ではないけれど、想いが繋がった瞬間だった。

照れくさそうに顔を赤くしている宮地と同じくらい、きっと私の顔も染まっていると思うほど熱くなった。

「…私は今この状況を嬉しいと思ってる。…宮地のこと好きだよ。」

すると頭に大きな手が置かれ、わしゃわしゃと髪をかき乱された。

「…戻るぞ。」

「え!?宮地返事聞かせてくれないの?」

「うるせぇ。…照れんだろーが。」

「一度でいいから聞きたいの!」

抗議をする私に呆れたのか、屋上のドアノブを掴んた手を離して、視線が重なった瞬間聞こえてきた言葉は私の頬を赤く染めた。

「…好きだ。」

すぐに視線を外して、私の前を歩こうとする宮地の制服のシャツの裾を引っ張った。

気持ちを締まっておけなくなって、もう一度伝えたくなった。

「大好き。」

私の足を一歩前に進めてくれたのは、紛れもなく二人で好きだと言ったあの曲。

この始まりのきっかけはラブソング。
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