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黒子のバスケ*Short Stories3

第46章 6月10日*木吉*


病院の外にある噴水近くのベンチに腰掛けると、鉄平は部屋から持ってきたどら焼きを半分こして、私に手渡した。

「これ、鉄平へのお祝いなんだけどいいの?」

「当然だろ。美味いものは分け合って外で食べた方がいい。」

二人並んでどら焼きを頬張っている無言の時間も、何故か居心地良く感じてしまう。

「…今日さ、先生からバスケの許可もらえたんだ。」

先に食べ終えていた鉄平の言葉が左耳を掠めて、私は驚いてどら焼きを手から落としそうになった。

「…え!本当に?…良かったぁ。」

やっと鉄平の努力が報われる。

一時的になるとは聞いているから、きっとまたここに戻ることになるだろうけど、それでも私は大好きなバスケをする鉄平をまた見たいと願ってしまう。

目尻が熱くなってきて、目から涙が溢れそうだったけれど、思い切り嬉し泣きする鉄平の顔を見たら引っ込んでしまった。

私はそっとハンカチで鉄平の涙を拭ってあげた。

するとその時不意に腕を引かれて、鉄平の胸に顔を埋めてしまった。

「、俺をここまで支えてくれて本当に有難うな。俺、絶対皆と日本一になるから。への感謝の気持ちも込めて。」

そんなこと言うから、止まっていた涙が我慢出来ずに溢れてしまった。

気付かれないように顔を俯かせると、大きな手で両頬を上向かせられた。

「てっ…」

言葉を紡ぐ前に鉄平の顔が視界いっぱいになり、涙を吸い取るように目尻に唇が寄せられた。

目尻の熱が顔中に広がって、私の顔は真っ赤に染まってしまった。

「…バカっ!ここ外なのに…。」

「俺はハンカチ持ってないんだから仕方ないだろ?」

本気でボケてるのか、私を驚かせるためにやったのか。

きょとんととぼけるその表情からは全く読み取れない。

これからもずっとこうして彼に惹かれ、鼓動を高鳴らされるんだろう。

来年の誕生日は、二人でお出かけ出来たらいいな。
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