第45章 6月3日*今吉*
これは一つの賭けでもある。
顔色を変えずに平然と言われてしもたら負け。
表情を変えたり戸惑ったりしたら勝ちの可能性が高い。
チラリとに視線を向けてみると、俯き気味になり手はぐっと拳を握りしめている。
「…それで私が翔ちゃんのこと好きだって言ったらどうなるの?」
「ワシも好きやでって言うたるわ。」
「…言わなかったら?」
成程、さすがやな。
単純に反応せんと心理戦に持ち込むあたり、ワシとずっと一緒におるだけのことはある。
少し肩を震わせているところや、見え隠れする顔が少し赤いところを見ると、賭けにはきっと勝つと思う。
そのまま言わせてしまっても嬉しいんやけど、初めて見るの姿についつい心奪われてしもた。
「そしたらワシは好きやでって言ってまうわ。」
その言葉が伝わった瞬間、は瞳をキラキラ輝かせて頬を染めて顔を上げた。
「…そんな告白、ずるいよ。」
控えめにワシの制服の裾を掴んで、二人の間にあった隙間を少し埋めた。
その距離がもどかしくての腰に両腕を回して、ぎゅっと抱き寄せた。
「…言うてくれへん?誕生日やで?」
耳元でそっと囁くと、ようやくはワシとしっかり目を合わせてくれた。
「…もう。…翔ちゃん、好き。 」
「ワシも好きやで。」
誰よりも心を許した愛しい彼女が腕の中。
やっと手に入れた、最高の贈り物。