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黒子のバスケ*Short Stories3

第43章 世界に一人だけ*笠松*


無我夢中で走って、気付けば目的地にたどり着いていた。

肩で息をしながら時計台へと向かうと、時計台の下でスマホをいじりながら待つをすぐに見つけた。

呼吸を整えながらゆっくりと近付くと、気配に気付いてはぱっと瞳を輝かせた。

「急に悪いな。待たせちまって…。」

「いえ、そんなに待ってないですよ。…あ。先輩、汗が…。」

そう言ってすっと鞄の中からタオル地のハンカチを取り出して、俺に手渡してくれた。

「…サンキュ。洗って返す。」

「いいですよ!そんなに気を遣わないでください。」

そうやってあの時もさりげない気配りと、何気ない優しさで俺を救ってくれた。

一つ息をついて、今日こそは真っ直ぐにの目を見つめて口を開いた。

「…今日監督に呼ばれて、キャプテンに指名された。」

「…えっ……!…引き受けましたよね?」

「当然だろうが。…俺は償いの意味も込めて、日本一になるために全力でやってみることにした。こうやってまた前向けるようになったのは…お前のおかげだ。…ありがとう。」

一大決心を一番に伝えたかった相手は一瞬目を見開いて、すぐに嬉しそうに優しく微笑んだ。

「そんな…。でも、私ずっと先輩の力になりたかったんです。だから…良かったぁ…。」

そんな風に思ってくれていたことが嬉しくて、それで満足しそうになったが、また気を引き締めた。

「あと、もう一つ伝えたいことがある。」

「何ですか?」

森山ならこういう時湯水のごとくスラスラと言葉が出てくるだろうに。

考えても上手いセリフは出てこないから、こう伝えるしかなかった。

「…お前が好きだ。」

目の前のは呆然として、何をどうしていいかわからないようだった。

「…悪い。もしお前が嫌なら忘れてく…」

「…嫌なんかじゃないです!…私、ずっと先輩のこと好きだったんですから。」

頬を真っ赤にしてそんな事を言うもんだから、俺までつられて顔が熱くなってきた。

「…嘘じゃねぇよな?」

「本当です!だから、「特別」って言ってもらえた時はすごく嬉しかったんですよ?…忘れてるかもしれませんけど。」

あの日を忘れるわけがない。

お前は特別だよ。

隣にいて欲しいのは、世界に一人だけ。
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