第4章 真っ白な世界だからこそ*赤司*
「それじゃあ、そろそろ行こうか。」
「うん。…あ、待って!」
私は雪で濡れてしまった手袋を外して、鞄の中に入れた。
すると征くんが私の手をとって、眉を寄せた。
「…冷たくなってしまっているな。」
雪にずっと触っていた私の手は、手袋越しでもだいぶ冷えてしまっていた。
征くんは自分の右手にはめていた手袋を私の右手に被せた。
「征くん、いいの?」
「あぁ。片手は繋げばいいだろう?」
「…ありがとう。」
当たり前のようにさらりと口にしたけど、私未だに征くんと手を繋ぐのドキドキするって知っててでしょ?
また征くんが私の手に触れた。
すると、私の手の甲を上にして、そっと持ち上げた。
「どうかし…」
手の甲に一瞬触れた征くんの唇の温もりが、私の言葉を止めた。
手の熱は一気に身体中に広がって、顔まで熱くなってきた。
「白い雪景色に、の真っ赤な顔が映えているよ。」
「もう!からかわないで!」
「からかっているわけじゃないよ。…可愛いと思っただけだ。」
そう言うと、征くんは私の手を包み込むように握ってゆっくりと歩き出した。
さっきの言葉は本当だ。
だって、横顔から覗く白い頬にほんのり赤色が挿しているから。
真っ白な世界だからこそ、二人の足跡がくっきりと残る。
真っ白な世界だからこそ、いつもより鮮やかな貴方の色。