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黒子のバスケ*Short Stories3

第40章 貴方だけの私*紫原*


静まり返った食堂で、敦は私の身体を自分の方に向けて、またぎゅっと包み込むように抱き締めた。

腕には力がこもっていて、昼間のように解けそうにない。

「…限界だった?」

監督の言葉を思い出して尋ねると、敦は私がいることを実感するみたいに私の両頬に手を添えて上を向かせた。

「…他のやつがちんの名前呼んで、取られちゃうのが嫌だった。俺のちんなのに。…でもちん忙しそうだし我慢しようとしたんだけど、もう無理だった。」

敦が私のために「我慢」してくれたなんて。

出会ったばかりの頃の、本当に子供のような彼からは全く考えられない。

あまりに愛しくて、嬉しくて。

敦の首に腕を回して頬にキスをした。

「…誰かに取られたりなんかしないよ。部活の時は皆のために頑張るけど、今は敦だけのためにいるの。」

そう伝えれば敦は目を丸くして、それからまたいつもの緩やかな笑顔を見せてくれた。

「ちん、大好きー。」

こうやってストレートに好意を言葉にしてくれるところがすごく好きで、いつも幸せな気分になる。

「…私も大好きだよ。」

口からするりと言葉が紡がれてしまうあたり、敦といると私も素直になれる気がする。

すると敦は屈んで私としっかり目線を合わせて尋ねてきた。

「ほっぺだけじゃ足りないから、ちゃんとちゅーしていい?」

そんなの、嫌だなんて言うわけないよ。

顔を見合わせて、お互いへにゃりと顔を綻ばせると、今度は唇が重なった。

心配しないで。

どんな時でも貴方だけの私だから。
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