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黒子のバスケ*Short Stories3

第40章 貴方だけの私*紫原*


練習前は用具の準備に、ドリンク作り。

練習中は部員の皆のデータを取ったり、大量の洗濯をしたり、怪我している人への手当をしたり。

他校のデータを集めて監督と一緒に解析するのもお仕事。

マネージャーの仕事は想像以上に大変なので、今や私一人になってしまった。

特に大きな試合が近付くと、その分練習の時間も長くなるから必然的に仕事も増える。

IHが近いこの頃は、毎日が慌ただしい。

折角のGWもIHが近いからということで、強化合宿で連日練習漬けだ。

劉先輩のテーピングをしているところに、後ろから声をかけられた。

「!ドリンクの粉ってストックあった?作っておくよ。」

「氷室先輩、有難うございます。部室の入って右側のロッカーの上の段ボールにあります。」

優しい笑顔を浮かべた氷室先輩に会釈して見送って、またテーピングに手を戻した。

「、謝謝。さすがに利き手側の腕のテーピングは出来ないアル。」

「お役に立てて何よりです。あまり無理しないでくださいね。」

劉先輩が他の部員のもとへ戻った後、不意に口からため息が一つ。

「ちん、ため息つくと幸せ逃げるよー。」

聞きなれた声に、私のお腹に回された長い腕。

頭にぽん、と置かれたのは、私よりはるか上にある彼の顔だ。

そう確信して振り向けばやっぱりそうだった。

「…ため息じゃないもん。深呼吸だもん。」

「あ、そう。頑張りすぎちゃだめだよー。」

すると今度は監督が私を探している声が聞こえてきた。

どうやら敦が私を覆っているから気付いていないみたい。

「ありがとう。…敦ちょっと離してくれない?監督が呼んでるから。」

「やだ。だって最近ちんと一緒にいる時間ねーし。こうしてたいのー。」

その気持ちはすごくすごく嬉しいし、私だって久しくデートもできていない彼と一緒にいたい。

でも、今は大会前の大事な時期だ。

「ごめんね、敦。行かなくちゃ…。」

自分の気持ちをぐっと押し殺して、敦の腕をゆっくり解いて、監督のところへと向かった。
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