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黒子のバスケ*Short Stories3

第36章 たまには甘えんぼ*黒子*


部屋着に着替えを済ませて、黙々とご飯を食べるテツくんの様子を台所仕事の隙間に眺めていた。

食後に温かいお茶を入れて、リビングのソファーに隣同士に座った。

お茶を啜って、一息つくテツくんはやはり口数が少ない。

頑張り屋で真っ直ぐな性格だから人前で弱音を吐くことが少ない。

年度始めのこの時期は保育士さんという職業柄とても忙しいのだろう。

「テツくん。」

少し大きな手に私の手を重ねて、体をテツくんに向けた。

「何ですか?」

「私の前では弱くてもいいんだよ。辛かったら辛いって言って?」

澄んだ瞳を真っ直ぐ見つめて気持ちを伝えれば、テツくんは少し驚いた様子を見せたけれど、すぐ柔らかく微笑んでくれた。

「…やっぱり君には敵いませんね。」

するとテツくんは私の肩に頭を乗せてもたれかかってきた。

さらさらな空色の髪が首筋に触れてくすぐったい。

「ここのところ仕事が忙しくて、正直参っていたんです。でも家庭を支える立場として、弱音を吐いていられないと気を張っていたのかもしれません。」

「テツくん一人で背負わなくていいの。私も一緒に支えるんだから。」

私も頭をこつんと寄せてもたれかかれば、お互い側にいるんだと実感することが出来た。

「…。」

「ん?」

「疲れました。癒してください。」

真面目な顔してそんなこと言うものだから、思わず笑い声が溢れてしまった。

「ふふっ…はい、旦那様。」

両手を広げて向かい入れる姿勢を見せると、テツくんは私の腕の中におさまった。

腰に腕を回して、肩に顔を埋めて、その表情はとても安らいでいるように見えた。

「、ありがとうございます。…君と結婚して良かった。」

貴方の強さも弱さも全部私が受け止めるから。

いっぱいいっぱい甘えてね。
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