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黒子のバスケ*Short Stories3

第35章 桜並木道*氷室*


風で乱れた髪を整えていると、辰也が顔にかかった髪を払ってくれた。

「ありがとう…。あ、辰也頭に花びら付いてるよ。ちょっと屈んで。」

先ほどの風で辰也の艶やかな黒髪に淡いピンクの花びらが残ってしまっていた。

辰也は私が届くように少し背を屈めて俯いてくれた。

そっと桜の花びらを払うと辰也が顔を上げて、いつもよりも近くで目線が重なった。

「Thanks.」

辰也はにっこり微笑んで私の頬に軽く唇で触れた。

何気なく挨拶代わりにするキスは本当にたちが悪い。

本人はしれっとしてるし、私は不意にキスをされることに慣れていないからいつも以上にドキドキする。

「あ。」

辰也は何かに気付き、足元に落ちていたものを拾い上げた。

手の中にあったのは桜の花一つ。

「花がそのまま落ちちゃったんだね。…可愛い。」

すると辰也はそのまま花を私の髪に当てた。

「うん、よく似合うね。…可愛いよ。」

普通の人がやったら少し寒いことでも辰也がやると様になるから不思議。

ただ、相変わらず無自覚でそんなことをするものだから、心臓がもたない。

「…辰也の方が似合ってた。」

「俺は男だから、花が似合っても嬉しくないな。」

辰也はくすくす笑いながら顔を赤く染めた私の手を取り、また肩を並べて歩き出した。

「…来年の今頃は高校卒業してるんだね。」

「そうだな。…それでもまた来年も見に来よう。」

「…うん。」

一面に広がるは花が咲き乱れる桜並木道。

これからも毎年花開くのを二人で心待ちにしよう。
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