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黒子のバスケ*Short Stories3

第35章 桜並木道*氷室*


「桜、やっと満開だね。」

「あぁ…。So beautiful...」

通学路の途中にある広い公園の中には桜並木道がある。

「春が来るとここは桜がぶわっと咲くんだよ。すごく綺麗なんだ。」

付き合い始めたばかりの冬に、寮までの道を歩きながら私が何気なく言った言葉を辰也はしっかり覚えていた。

春が近付くにつれ、桜はいつ咲くのか気にしていた彼にとっては念願の風景だ。

今日はミーティングだけで部活も終わり、まだ外が明るいうちに学校を出ることが出来た。

たまに立ち寄る時は練習後の夜だったので、暗がりの中で僅かな花の光を見て、満開になるのを心待ちにしていた。

桃色の世界が一面に広がって、歩いている人たちも嬉しそうに眺めている。

優しく風が肌をかすめると、ふわりと花びらが待ってまた目を奪われた。

「辰也ってそんなに桜好きだったの?」

「…正直子供の頃は桜を見て特に何か感じたりはしなかったんだけどね。が綺麗って勧めてくれたから、見てみたいと思ってたんだ。」

そう言って手を伸ばして桜の花に触れる辰也はとても綺麗で、思わず見惚れてしまった。

「花一つ見ても可愛らしいね。…日本はやっぱり風情がある。」

私の視線に気が付いたのか、こちらを振り向き優しく微笑んでくれた。

私にだけ向けられる愛しさを帯びたその笑顔に、嬉しくて私も自然と頬が緩まった。

その時また風が通り抜けて、視界が桜の花びらでいっぱいになった。
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