第34章 プライドなんて捨ててしまえ*花宮*
放課後体育館の重い扉を開ける。
大体部員では俺が一番に来るが、必ず先にあいつがいる。
確信を持ってはいたが、姿を見つけると口元が僅かに緩む。
「あ、花宮くん!今日も早いねぇ。」
「お前よりか遅いだろ。てか、お前他にやることねぇの?マジで暇人だな。」
「うるさいなー。早く部活来たいんだからいいでしょ?」
「悪いなんて言ってねぇだろ。…ほら、ボール出しといてやるからドリンクの準備してこい。」
「ありがとう!じゃあお言葉に甘えまーす。」
ドリンクを作るの背中を横目で見ながら、改めて思う。
有り得ねぇだろ。
俺が一人の女を「特別」だと感じてしまうのは。
は目立つタイプじゃないし、取り分け美人って訳でもない。
ただ相手がどんなやつでも分け隔てなく接するから、俺の本性を知ってもそれを受け入れてくれた。
だからあいつを俺だけのものにしたいと思ってしまう。
妬みか嫉みかあいつが他の男と話しているだけで妙に苛々する。
会話を耳にしたり、その姿を見かけると、条件反射でその場を離れてしまう。
「テスト近いけど大丈夫なの?」
「そんな訳無いじゃん!瀬戸くん、勉強教えて?」
俺に聞けばいいだろ、そんなの。
「ねぇ原くん、前髪切ったら?」
「えー?俺前見えてるし切らないってー。」
どうでもいいだろ、そんなの。
「、頭にゴミ付いてる。」
「うそ!取って取って!」
古橋、そいつに触んなよ。
気付いたらその姿を目で追って、他の奴らと楽しそうにしてることに腹が立つ。
…重症だ。