第30章 やっぱり特別*高尾*
今日は久しぶりのデートだし、巻物を冬物のマフラーから買ったばかりの花柄のストールに変えてみた。
裾にレースが付いているそれは、早速お気に入りの仲間入りを果たした。
待ち合わせ場所の駅前の時計は待ち合わせの定番だから、相変わらず沢山の人たちが行き交っていた。
う…人酔いしそう。
とりあえず人混みを抜けてその場所が見えるところまでエスカレーターで上った。
まだ少し早いから、メッセージ送っておこうかな。
近くにあったベンチに腰掛けて、携帯を取り出してロックを解除すると、頭にぽん、と手が置かれたような感触がした。
何かと思って見上げれば、「待ち人来る」だった。
「ちゃん、おっはよ!ごめんな、待たせて。」
「…びっくりした。今和くんに連絡しようと思ってたとこだよ!」
「そりゃグッドタイミングだったわ。良かった。」
でも、ふと疑問に思った。
この場所は待ち合わせ場所ではない。
普通だったら待ち合わせ場所でそのまま待つか、「ここにいる」みたいな感じで連絡してくるはず。
「和くん、何でここ来たの?」
「ん?ちゃんの行動パターン考えたらわかるって。人混み苦手っしょ?」
「…お見通しですか。」
「わかりやすいぜー?今ちょっと拗ねてるだろ。」
その切れ長の瞳で見透かされているようで、何だか悔しい。
私の行動も気持ちも丸見えみたいじゃない。
「…拗ねてないもん。」
「はいはい、そろそろ行こうぜ。」
そう言うと、和くんは私の腕をぐいっと引っ張って私を立ち上がらせた。
「そのストール新しいやつだろ?似合ってんぜ。」
「…ありがと。」
私の些細な変化に気付く彼に、悔しくて中々可愛い態度はとれないけれど、実はこっそり嬉しいって思ってる。
私にもっと素直になりたい、可愛くなりたいって思わせる和くんは、やっぱり特別。