• テキストサイズ

黒子のバスケ*Short Stories3

第29章 いてくれてありがとう*赤司*


「せ…征くん!?」

突然で、しかも初めての膝枕に驚き動揺する私を見上げ、征くんはもう一度瞳を開けて、ふっと柔らかく微笑んだ。

「…少し休みたい。悪いが、少しの間ここを貸してくれないか?」

好きな人にそんなに丁寧に尋ねられて、首を横に振る女の子はいない。

しかも相手が征くんなら尚更。

静かに私が頷けば、征くんはふっと瞳を閉じて頭の重みを私に委ねた。

眠っているかはわからないけれど、瞳を閉じた表情はいつもよりもどこかあどけない。

肌は羨ましいほど白くて綺麗。

赤い髪が風でふわりと揺れている。

絶対的なリーダー力で部を率いるキャプテンは、頭脳明晰でスポーツ万能、容姿端麗、品行方正。

いつも皆から注目されている完璧な彼だって人間だ。

時には疲れてしまって力を抜きたい時だってあるはず。

私の膝枕で今彼が休めるのなら、どれだけでも貸してあげる。

どうしても我慢できなくて、風に揺られる赤髪にそっと触れて頭を少し撫でた。

さらさらと指を通る髪の感触に感激しつつ、邪魔になってはいけないと思い、数回で手を止めて引っ込めた。

「…。」

下の方から私の名前が聞こえたので視線を落とせば、征くんは眩しいのか目の上に手を当てて光を遮っていた。

「えっ…あ、はい!…ごめん、起こしちゃった…よね?」

「…いや、目を閉じていただけだ。…それより続けていてくれないか?」

何を続ければいいのか一瞬分からなかったけれど、はっと気付き、もう一度征くんの柔らかな髪の感触にドキドキしながら頭を撫でてみた。

「…これ?」

「そう…。何故だか落ち着くんだ。」

私に甘えてくれている征くんが何だか可愛くて。

彼がこれほどまでに気を許してくれていることが何だか嬉しくて。

「特別」だって言ってくれているかのようで、心がくすぐったくなった。

「…。」

征くんの顔を覗き込むと、今度は瞳を閉じたままだった。

「何?」

「…いてくれてありがとう。」

「…うん。どういたしまして、なのかな?」

「君が僕の隣にいるのは当然だけれどね。言葉にしたいと思ったんだ。」

隣にいるのは当たり前。

だって貴方のことが好きだから側にいたいの。

この時間は恋人同士の私たちの大切な時間。

私しか知らない彼の顔を、これからも隣で見ていたい。
/ 266ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp