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黒子のバスケ*Short Stories3

第20章 あなた専属のパティシエール*紫原*


私の手から敦の手に渡った箱が開かれた。

敦は箱を覗いて、ふわりと嬉しそうに微笑んだ。

「…いただきます。」

そこに入っていたのはハート型のガトーショコラ。

最初は焦がしてしまったりうまく膨らまなかったけれど、練習を重ねてようやく一安心できるものは完成した。

初めて手作りのお菓子を食べられる緊張感に加えて、自信のなさが拍車をかけて、ケーキを口にした敦をまじまじと見つめてしまう。

「…どう?」

心配になって尋ねてみると、敦は不安を和らげるように私の頭を撫でてくれた。

「美味しーよ。」

「本当?…でも敦みたいに上手く出来なかった。」

「今まで食べたガトーショコラの中で一番美味しい。だってちんの気持ちがすごい伝わるもん。」

敦は思ったことを素直に言う。

つまり絶対に嘘は吐かない。

嬉しそうにフォークを進めるその姿を疑うことなんて出来ない。

自分が一生懸命作ったお菓子をこんなに幸せそうに食べてくれるなんて。

お菓子をもらった時も嬉しかったけれど、あげる時も相手の笑顔が見られて嬉しいものなんだ。

「ちんも食べるー?」

「うん。」

フォークを貸してもらおうとすると、不意に腕を掴まれて顎を持ち上げられて唇が重なった。

「美味しいでしょー?」

「…もう。」

こんな甘いキスをもらえるのなら、来年も頑張っちゃおうかな。

あなただけの専属パティシエールにしてくれる?
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