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黒子のバスケ*Short Stories3

第20章 あなた専属のパティシエール*紫原*


今日は2月14日。

男子も女子もソワソワ浮き立つバレンタイン。

お昼休みに彼との待ち合わせ場所に向かう途中でも、深刻そうに友達に相談する女の子や、チョコレートをもらって嬉しそうにしている男の子が目に入った。

太陽の光がよく当たる中庭で、一際目立つ彼の姿を見つけた。

「敦!お待たせ!」

私の声に気が付いた彼は、さらりと柔らかな紫色の髪を揺らして振り向いてくれた。

「ちん、遅いよー。お腹空いた。」

「ごめんごめん!食べよっか。」

二人それぞれお昼ご飯を取り出して口に運ぶ。

パンを口いっぱい頬張る姿が、大きいのに子供みたいで何か可愛い。

「ちん、その玉子焼き一個ちょーだい。」

「はい、どうぞ。」

私の箸から玉子焼きをぱくりと一口で食べて、敦は表情を緩めて満足そうな顔をした。

「…うん。ちんのお母さんの玉子焼きやっぱ美味いねー。」

いつもと同じ和やかなお昼ご飯の時間。

ただ、敦が抱えてるパンの数がいつもより一つ少ない。

「あれ?敦待ってる間にパン一つ食べた?」

「ううんー。今日はお腹いっぱいにしたくないだけ。」

「なんで?」

「ちんのチョコ食べたいからねー。」

お腹に余裕を残してまで私のチョコを楽しみにしてくれていたのかと思うと、期待されて嬉しい気持ちと満足してもらえるか不安な気持ちが合間見える。

「…そんな大したものじゃないよ?」

「それは俺が決めるからいーの。」


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