第9章 再会
零くんの車に乗せられる
『いいって言ってるのに…』
《僕があなたを送りたいんですよ》
最後の抵抗を試みるも、それも無駄に終わった
零くんが運転席に乗り車を走らせる
『誰にでも、こんなふうに優しくするんですか』
無意識に聞いたことだった
零くんは少し黙ったあと答えた
《そう言えば…別の方にも、そう聞かれました》
私はお昼の会話を思い出す
(あ、まずった…
お昼にも別の顔で言ったんだ)
しかし、零くんは特に気にしたふうもなく続ける
《別に誰にでもってわけじゃありませんよ
本来なら救急車を呼んでいたと思います
でも、何ででしょうね
あなたには優しくなる》
素直に嬉しいと思った
『そんなこと言われたら惚れちゃうかもですよ?』
そう言うと、零は困ったように笑った
《それは困るな
僕には好きな子がいますから》
『それは、初恋の女の子?』
《……僕にも、よく分からなくなりました
ある人に出会ってから、その人の事が頭から離れないんです》
言葉をなくす
(……子供の頃の約束だもんね…)
覚えててくれただけでも嬉しいのに、やっぱりそれ以上を考えてしまう
(迎えに来るって言ったくせに…)
私は泣きそうになるのを堪えるので精一杯
でも…
(零くんが誰を好きだとしても、あなたの笑顔は命を懸けて守るよ)
改めて、自分に誓ったのだった