第11章 欠け落ちる
今日は何だか眠気はない。それよりもドキドキと胸が痛いほど鳴っている。何だかじっとしてられない。
それはもうすぐ安室さんが帰ってくるからあり、何でもないのにドキドキしている。
行動を取ろうと決めたのは良いけれどどうしよう。
何をすればいい感じに記憶を拾えるのだろうか。
『探偵さんに抱いてもらえば?』
「いやいや!!」
百合ちゃんの声が頭から離れない。そんな体の行為なんて想像もしてないし、百合ちゃんも冗談と言っていたし!
ソファに上体を倒して息を吐いた。まだ帰ってこないかな安室さん。
この頃、安室さんの事をもっと知りたくなってきて欲深くなってきた。
もっと私を知ってほしいし、安室さんの事を知りたい。そう思うのは恋人だからだけども……でもな。
ガチャと扉が開く音がした、安室さんが帰ってきたんだ!
上体を起こし、リビングから玄関まで行ける扉を開けると安室さんがいい感じに対面した。
スーツを着ていて、少し着崩していていつもと違う鋭い目線で私を見る。安室さんだけども、誰か違う人のように見えた。
か、かっこいい……。
「……雪花さん……?」
「抱いてくだい。」
おかえりなさい。
うん???安室さんはポカンと目を見開く。
自分が自分が何を言っているのか分からなくなり、頭の中は全部はてなマークでいっぱいになった。
抱いてください。抱いてください……
「だ、抱いてください!!??」
何を言っているんだ!私は!!
驚きが止まらなく、今からでも穴に入りたいほどに。一気に現実に戻ったような感覚になり、すぐに頬が熱くなり自分でも分かるほどに茹でダコ状態になってしまった。
「あ、あの、え、えーと。それは、えっ……っ!?」
慌ててすぐにこの場をどうにかしようと思い、嘘だと言おうとした瞬間、手首を掴まれてさっきまで表情が見てなかったけれど目だけがあった。
それは安室さんだけども、違う人に見えてドキっと胸が鳴る。