第11章 欠け落ちる
「今から否定するのか?」
「あ、安室さん……?」
いつも敬語で穏やかな安室さん。
でも、今は敬語を使っていなくてギラギラとした目で見てくる、簡単に言えば、獲物を捉えた狼の目。
今はまで以上に凄く男らしくてドキドキと胸が鳴る。
「……仕事帰りなので、ゆっくりした後はどうですか?」
「待てない。」
「で、でも!安室さん、お疲れ様じゃないですか!」
そんな中、私に付き合ってもらうなんて図々しいにも程がある。手を離してもらいぎゅっと腕を握るとため息をつかれた。
「……ずっと、待ち望んでいた。と言えば雪花さんはしてくれますか?」
「っ!」
「相変わらずお人好しですね、でも、今はお節介さんですよ。もっと男の気持ちを学んできてください。……でも、それが雪花さんかぁ……。」
待ち望んでいた。もしかして、私を気遣ってくれていたのかな?優しい、優しすぎだよ安室さん。
元彼は、私が嫌だと言っても猛獣のように襲いかかった。こんな男の人は初めてだ。今からでも抱き締めたい。
ゆっくりと腕から手を離していくと、安室さんはそのまま私を抱っこをして歩き始めた。
「まさか、雪花さんからお誘いがあるなんて思いもしませんでした。」
「は、恥ずかしいので、それ以上言わないでください!」
「これからもっと言わせてもらいますね。」
恥ずかしすぎて今からでも、ここから逃げたい。そう思っていても逃がしてはくれないだろう。いや、逃げたくない。
安室さんは楽しそうに声を上げれば、寝室に入って行った。