第11章 欠け落ちる
「裸の付き合いで突発的に思い出すんじゃないの?」
「そういう関係になった事ないから……!」
「今の記憶の中だけの話でしょ?忘れているんじゃないの?」
確かに同棲しているのにそういう関係になってない方があまりないかもしれない。
頬を手で隠すように付けると「冗談だけど。」なんてしれっと言われた。
「……ねぇ、もう早く帰った方が良いよ。もうすぐ来るから。」
「そう、だね……。ゆ、百合ちゃん……。」
なんで犯罪に手を加えることをしたの?
そんなことしなければ、刑務所だって入らないし、傷付くことなんてまずなかったはずだよ。
ぐっとその思いをふさぎこんでは、百合ちゃんに笑いかけた。
「また、会いに来ても、良い……?」
「えぇ、今度は刑務所の中かもね。」
お辞儀をして、病室から出て行った。すると何故か涙が溢れて止まらない。
なんで百合ちゃんは隠そうとするのだろう。悲惨な事故だったから?それでも、何かを悟られたくなかったから?
欠け落ちた記憶は何かきっかけがなくては思い出せない。
百合ちゃんがどんな思いで私を助けたのか、
安室さんは何故いつも悲しそうにしているのか、
そうだ、私が行動を起こせばいいんだ。
きっと何かを拾えるはず。
包帯が巻いてある腕で強引に拭き、安室さんの家まで向かった。