第11章 欠け落ちる
「知らないわよ。」
「そ、そうだよね……。」
馬鹿じゃないの?と言いたそうな顔で見られても困る。
私はまだ入院している百合ちゃんに会いに行った。本当は禁止されていたけれど秘密。と言うことで。
百合ちゃんに記憶が直る方法を聞いてみたら即答されてしまった。
「……本当に何も覚えてないのね。」
「百合ちゃんとランチ行ったことは覚えているよ。でも、その後って会ったけ?」
「うん、会った。会って、誘拐した。」
じゃあ、その期間だけ抜けているのか。
自分が拉致されたなんて何も実感なんてない、それが本当なのかどうかも不明である。「そうなんだね。」と言って流した。
「き、聞きたいことがあるの、なんで、百合ちゃんは私のことを……あの。」
「救ったの?でしょ。」
警察の方が言うには、私を庇うような体制でいた。と言う。普通、裏切るのだったら庇うわけなんてない。
もしかして、同情して私を庇ったのかな?緊張で目が廻りそうになる。百合ちゃんはため息をついた。
「……可哀想だと思ったからよ。あと、記憶が欠け落ちた事を探ろうとしないで。覚えてない方が幸せなことだってあるの。」
「それでも、私……。」
安室さんが悲しく微笑んでいた意味を知りたい。なんて声に出せなかった。しかし、百合ちゃんは私が言いたいことが分かったのか頭を撫でられて微笑まれる。
「……そんなに悩んでいるんだったら探偵さんに抱いてもらえば?」
「は、はい!!??」
百合ちゃんは何を言っているのだろうか。
驚いて椅子から転げ落ちたのと顔が急に熱くなった。