第11章 欠け落ちる
「し、失礼しまーす……。」
合鍵を使って部屋に入ると誰もいなかった。
やっぱり安室さんお仕事忙しいからまだ帰ってきてないのかな。
リビングまで荷物を持ち、進んでいくと何も変わってなくてホッとする。スマホを取り出し、《今、帰ってきました。晩御飯は入りますか?》とメッセージを送った。
明日から仕事に復帰しなければいけないし、準備をしてしまおう。そう思いながら、冷蔵庫に入っていた食材で晩御飯を作り始めた。
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「あ、おかえりなさい。」
バンッと勢い力開いた扉に驚きながらも目線を向けると息切れをしたスーツ姿の安室さんがいた。
いや、安室さん……?いつもよりも鋭い視線でドキっと胸が鳴る。
「雪花!!」
いつもはさん付けなのに呼び捨てで呼ばれてぎゅっと強く抱き締められた。ご、強引……。そんな安室さんも好きだけども。
「安室さん、ご心配かけてすみませんでした。」
「え……。」
なぜかびっくりした顔をされたが、病院の審査結果を報告した。痕は残るのと一部の記憶障害が出ている事を。
悲しそうに微笑んでいる安室さんに何故か泣きそうになってきた。
「でも、安室さんの事は忘れてませんよ!」
「……僕の名前は?」
「安室透ですよね?大丈夫ですよ、フルネームも覚えています。」
安室透。何だかんだもどかしくて、それが本当なのか分からなくなってきた。しかし、彼は頷いているので私も強く抱き返す。なんで百合ちゃんは裏切るような行為をしたのだろうか、今度面会をしたい。しかし、仕事あるしな。
あと、沢山聞きたいことがある。
「……そうだ、忘れているのと思うのですが雪花さんは仕事辞めましたよ。やっぱり、あの男関係で。」
「そ、そうだったんですか!?よ、良かった……て早く仕事探さなきゃいけないですね!」
……なんで安室さんは悲しそうなんだろうか?