第6章 一転
元彼は麻薬の運び屋だったらしくアジトはまだ見つかってないらしい。あと、組織との関係性も深いらしく捜査は引き続き行うらしい。
すごく軽く取り扱っていたのでそんな深い話題ではなさそうだ。
なんだか震えが止まらなくなりスマホを取り出した。
百合ちゃんは知っていたのかな?この事を。電話をかけるが、全く出ない。
もしかして、安室さんも知っていて……。まだ事件は解決していないとアナウンサーは答えていた。
安室さんは遅くて前に玄関に迎えに行った時は何だか苛ついているような雰囲気を察した。
何だか安室さんじゃない、誰か別の人に思えたが疲れているからだと思い、気のせいだと思っていた。
この頃、安室さんが私に元彼のことを多く聞いていたのはもしかして?
イヤな事しか考えられない頭をどうにかしたい。
頭の考えとは、違うような行動をする。百合ちゃんのを切り、元彼の名前を調べてみた。
<麻薬の運び屋。手がかりはなし。>
そう書かれてあった。ネットの反応は誰も興味はないらしい。
そして、もう1つ調べてみた。それは元彼のことではなく、違うことを。
「ハニートラップ……。」
ハニートラップ。
対象の人物から情報を得るために、色気仕掛けをしたり、弱みを握りそれを脅迫にするなど様々な方法で聞き出すこと。
主に女スパイから男へが多いが、男から女へのことも同じ意味を持っている。
安室さんは探偵だ。前にボソッと『そういう仕事もある。』と聞いたことがある。まさか、私にそんなことを……?
『探偵さんは危ないと思うけれどね。』と最初に言っていた百合ちゃんの声が頭に繊細に映し出された。
百合ちゃんは知っていてそんなことを言ったかもしれない。私が流されやすく、依存しやすいから?
助けを求めた先にこんな未来が待っているとは思えなくて涙が久しぶりに溢れた。
もしかしたら違うかもしれない。でも、私は安室さんのことをよく知らないから分からなくなってきた。
リモコンでテレビを消し、三角座りをして顔を埋める。
あの言葉は嘘だったのだろうか。嬉しくて、本当に安心していたのに。あぁ、うさぎって言われたのはそういうことか。
「狼にすぐ、負けちゃうからな。」
前は納得は出来なかったけれど、今は妙に納得できる。
男と言う名の"狼"に私、"うさぎ"はすぐに捕まってしまう。