第5章 あらたな
「……うさぎ。」
「はい、うさぎにそっくりですよ。」
何だか複雑だ。うさぎって凄く可愛いけれど縄張り意識が高いんだよな。昔、うさぎを飼っていたのだけども何度噛まれたことか。そして、いつも足をダンッと鳴らされて威嚇されたことか。
昔の記憶を思い出しながら、「お風呂沸いていますが入りますか?」と聞いたら、先にご飯を食べたいとのことなので切ったパンを温め、クリームシチューを煮込んでいく。
「そうだ!安室さん、いい感じの物件を見つけました。」
「……もしよろしければ、あとで見せてくれませんか?」
友達との終わったあと、不動産さんに行ってきた。
またまたアパートなのだけどもこの町から少し離れていて、駅から近すぎず遠すぎずと中途半端な所にあるけれど苦ではない。
そう話していくうちにフランスパンが焼けたので皿に出してシチューも皿に装った。
うん、すごくいい感じな出来栄えだ。他に作っていたがシチューだけは得意な料理になってしまった。
軽い副菜も作っており、それも机に並べていきスプーンなども置いていく。
「何だか、結婚しているみたいですね。」
「お、おっと、とっと、!」
スプーンが落ちそうになったので持つ方を掴み、床と対面は免れた。急に何を言い出したのか分からない。
そして、友達に言われた『好きなんじゃないの?』という言葉が頭の中に浮かび顔が熱くなる。
スプーンを机に置き、しゃがみこみ顔を隠した。
「きゅ、急に何言い出すんですか!わ、私は居候でで、ですよ!」
思った以上にきゅっと胸に来た。別れたあとなのに好きになるの早く過ぎないのか?いや、あの人には好意なんてなかったけれど!
予想以上に荒れている頭。すると人気を感じた。
「……本当は、僕のことが好きなんでしょ?」
耳元で安室さんの声が頭に響く、そうしてもっと耳に熱を持ち始めた。