第5章 あらたな
「……もし、好きではないと言ったらどうしますか?」
「意地悪な質問ですね……、まぁ好きにさせますけれど。顔を上げてください。」
好き、なんだと思う。でも、分からない。
もしも、付き合ったらどう変わるの?もしかしたらこの生活から一変してしまうかもしれないという不安。
そんな不安が胸を締め付ける。
「やっぱり、不安ですよね。付き合うという事が。」
「……私は、安室さんのことが好きだと、思います。まだはっきりしてなくて。」
「まぁ、あんな事があったから仕方がないですよね。そうだ、こういうのはどうでしょう。」
頭を優しく撫でられる。顔をあげさせないのは安室さんの優しさだろう。ぎゅっと安室さんのYシャツを掴む。
「期間を決めて付き合うのはいかがけでしょうか。雪花さんが本当に駄目だったら言ってください。」
「!、それは安室さんが大変じゃ……。」
「平気ですよ、生憎僕は実感させる自信がありますので。」
なんという自信家。熱も収まってきたので顔を上げるとしゃがみこんでいる安室さんと目があった。
何だか微笑んでいるけれどこれは本当の笑みなのかどうかは分からない。本当に平気だと思っているのだろうか。
首を縦に振ると「それでは、よろしくお願いします。彼女さん。」なんて甘い声が2人の間に溶けていった。
私は安室さんとあらたな関係を築いてしまったらしい。