第5章 あらたな
「探偵の家に居候するとか……、本当にお馬鹿だね。」
「お馬鹿……。」
何日か経ったが安室さんの帰ってくるのは私が寝たあと、夜遅くになってしまった。だからあまり話す時間はなくなり、何だか寂しい気持ちもあるけれど、安室さんの探偵業は大変だということが分かった。
あの元彼と浮気をしていた友達と話し合いをし、和解をした。その友達は私が彼女だと思っていなかったらしくて付き合っていたらしい。本当かどうかは不明である。
少しおちゃらけたカフェでその子と向かい合わせで座っているけれど本当に月とスッポン状態。
格好良くコーヒーを飲む姿も綺麗で私はというとミルクティーである。
「あんな事があったのにそうなるなんて考えられないよ。私は危ないと思うけれどね、その探偵さん。」
「でも、凄く優しいし私にも気を使ってくれたりして……。」
「そうやって雪花の優しさに漬け込んでいるんじゃないの?あと、そうやって流れやすいところと依存しやすいところも。」
うぅ……。優しさについては分からないけれど、流されやすいところは合っていると思う。依存しやすいって……。「まぁ、あの事件は依存というよりも洗脳だったけれどね。」と言い、サンドイッチを一口食べた。
たまごサンドイッチを食べているとじっと見られて、チラッと友達を見る。
「ど、どうしたの……?何かついている?」
「ううん、ハムスターみたいで可愛いな。と。いつも暗い顔をしていたから分からなかった部分もあるけれど、今は前向きな顔をしている。
もしかして、その探偵さんのおかげかな。」
前向きな顔をしている。とはどういう事だろうか。
ハムスターみたいに頬を膨らまして食べているの!?いや、ハムスターは頬に種とか溜めているか。あと、一口になったたまごサンドイッチを口に入れた。
「そうかな?でも、あの人と別れたのもあるけれど……。」
「もしかして、あの探偵さんことが好き?」
安室さんのことが好き?いやいや、それはないと思う。
だって優しくて、いつも笑ってくれたり、割れ物を扱うような手で頭とか撫でてくれてそれが気持ちが良いとか…あれ?
「好き、かもしれない。」
なんだかんだと言って、私の中に安室さんが棲みわたっていた。ドキドキなんてしないけれど、安心できるそんな人になっているのは確かだった。