第4章 なぐさめから
「お久しぶりです!お礼を言いたくて。」
「……なんでそんなに笑顔なんですか?」
どういう事だろうか?運転席に座っている安室さんを見て疑問を言おうとすると「シートベルトをしてください。」て声をかけられた。
すぐにシートベルトをつけると、行き先も分からないまま車は発車をし景色が動き始める。
「君は、優しすぎる。自分のことは後にして、周りのことばかり見ている……だからこそ、あの男は君に漬け込んだんでしょうね。」
「……優しいですかね?私は、ずるいですよ。浮気の証拠だって、安室さん達探偵に頼んで……。」
あと、いつもドジ起こしては怒られて殴られて。そんな彼には何も出来なくて。最終的には、警察に助けを求めるではなく探偵に助けを"求めてしまった"。警察官の方にも言われた。『探偵の前に、暴力をふるわれていたら警察へ連絡してください。』と。でも、警察は元彼が一番嫌っていて呼ぼうとした時にはどんだけ怒鳴られ、殴られたことか。
思い出してくると涙が溢れてくる。久しぶりに泣いた。
袖で強引に拭き上げると目の前には、ハンカチと褐色の手が見えてその方向へ目線をいくと運転に集中している安室さんが見えた。
「本当に、ずるい方だ。僕が運転している時に泣き始めるなんて……でも、泣いていてください。元彼の愚痴だったらいつでも聞きますよ。」
綺麗にウィンクをされた瞬間、蛇口を捻ったように涙が頬に伝わった。ハンカチを受け取り、目に当てる。
探偵さんってこんなに優しい方々なんだな。面倒くさい恋愛事情に巻き込まれてもなお、慰めてくれるなんて。