第3章 早い仕事に、バカな男
あのあと、もう少し調べてくれるらしくてお願いをした。依頼をした頃から彼とは会ってない。いや、会わないようにしていたんだ。相談をしたところ、『絶対に会わないほうがいい。』と安室さん達に言われたのでそのとおりにしている。
申し訳ないけれど、家まで送ってくださりもうすぐで浮気を突き止める証拠を見せられる時が来たと嬉しく思えた。
それと家に戻るときに『何かあったら頼ってくださいね。』と言ってくださりすごく頼もしい気持ちになる。
「!?、な、なんで……?」
私は1人暮らしのはずだ。でも、何故彼がここにいるのか分からない。部屋まで行くと1人の男が扉の前で座りこんでいた。私の声に合わせるかのように顔を上げられて目があった。
その目は安室さんや毛利家族などとつい先日まで見てきた目線ではなく冷たく……いや、狂ったような目をしていた。
この男こそ、私が依頼対象の彼氏だ。
「あの男は誰だ。」
私が車から出て行っているところを見ていたのか低くてまるで怒っているかのように声を上げる。
怖い、怖い、なぜ、彼がいるの?
「わ、私、う、浮気の証拠をっ、いたいっ!」
髪の毛を引っ張られて引きずられては、ガンっと扉に頭をぶつけられた。「早く開けろ。」と耳元で呟かれては震えが止まらくなるし、涙も溜まってくる。だめだ、泣かないで安室さんに慰めてもらう約束だ。ここで泣いたらだめ。
髪の毛掴んでいる手を掴み、離そうとすると「早くしろ!!」と怒鳴られて手を離した。
こんな大騒ぎしているんだ、誰かが助けてくれるはず。
しかしながら、誰も部屋から出てくれてない。一応、夕方の6時ぐらいだ。誰も助けてはくれない。
諦めがついたのか、鞄から震えながらも鍵を出して扉を開けた。