第6章 藪から棒
「シェイドは、パトロール?」
『そうです』
切島の質問に答えたシェイドは、おもむろに手にしていたペットボトルの水を飲むと、逆に質問した。
『烈怒頼雄斗さんは、仕事ですか?』
「うんそう。暇だけど」
『暇、と言いますと?』
「一応この家主のお子さんの護衛が仕事だけど、何から護っているのか教えてくれないんだ。だからこうして見回りしてるだけで子供を狙う何かが少しでも、諦めてくれるなら、まあいいか、なんて」
切島は屋敷を一瞥してはにかんだ笑顔を見せる。
『依頼主が教えてくれないのですか?』
「依頼主本人は出張でなのかいなくて、代わりに使用人が依頼について教えてくれたんだけど、やっぱり詳しくはないっぽい」
『何人体制で護衛しているんですか?』
「5人だよ。あ、でも使用人さんも結構な腕前だったから実質7人かもな」
『使用人さん達はどういった方達ですか?』
「なんかよくわからないんだよな。何考えているのかわからないけど、こっちの事は結構気遣ってくれるというか」
『それ、ヒーローとしてどうなんですか』
「うんそれ俺も思った」
そう言うと切島はどこか楽しそうに笑った。
シェイドはそんな様子の彼を見て、静かに口を開く。
『ところで烈怒頼雄斗さん』
「うん?」
『私が聞いておいてこんな事を言ってしまうのは大変恐縮ですが、貴方が話してくださった事、部外者の私が聞いてしまっても良かったのでしょうか?』
「…………あっ」
切島が自分の過ちに気付いて目にしたのは、ゴーグルをはめてバンダナで口を覆ったシェイドが自分に向かって、白い煙を出す筒を向けている姿だった。それが、最後の景色だった。