第2章 どんぐりの背比べ
午後11時頃。
シェイドの目の前には、3人の青年が立つ。
場所は川の土手の上。
シェイドは、「この人たち、どこかで……?」と思っていると、赤髪の青年が口を開いた。
「急に追いかけ回してごめんな。怖かったろ?」
シェイドは返答に困った。
ここで素直に「怖かった」と言えば済むのだが、「ヒーローが一般市民を怖がった」と言う事実が残る。だからと言って「怖くなかった」と答えても、「何か違う」とシェイドは思ったので、
『えぇ………はい………まぁ………それなりに……』
曖昧に答えた。少なくとも「怖い」と感じた事は否定していない。
「だってさ、爆豪!」
そう言いながら、赤髪の青年が砂色の髪の青年の肩に自身の手を置いた。
砂色の髪の青年__爆豪は、それを鬱陶しそうに払い除けると、シェイドを睨んできた。
「てめえ、何者だ」
睨みながら、質問してきた。
『(それはこっちのセリフでもあるんですが?!)』
シェイドはそう思ったが、言わなかった。もちろん顔にも出さなかった。
シェイドは相手の言う通りにしておけば丸く収まるように感じ、下手な嘘をつく必要はないと思ったので、素直に答える。
『本日より、この町にヒーロー事務所を構えさせていただきました、シェイドと申します』
少し早口になってしまったかもしれないが、端的に答える。
案の定、3人は驚いた。
「マジで!?君もヒーローなの?!俺たちもだよ!」
金髪の青年の驚いた台詞に、今度はシェイドが驚いた。ついでに、思い出した。
この金髪の青年。新聞やテレビのニュースなどで情報を入手する際、この目立つ髪色と相まって、シェイドはなんとなくだが覚えてしまっていた。
確か名前は………
「俺、チャージズマ!知ってる?」
ご丁寧にも本人から名乗ってくれた。
シェイドはこれにも嘘をつく必要は無いと思い、正直に答える。
『はい。存じ上げております』
それを聞いてチャージズマは嬉しかったのか、「俺有名人?有名人になれた?!」と言いながら、赤髪の青年の背中を叩いている。
叩かれている赤髪の青年は特に気にした様子も無く、今度は彼がシェイドに質問した。
「じゃあ、俺のこともわかる?」
『えぇ……っと……』