第2章 どんぐりの背比べ
「あ?」
「うわあっ!」
「ぎゃああああ!」
シェイドは突如、橋の上から聞こえた声に驚いて顔を上げる。
そこには男が3人、こちらを見て立っていた。正確に言うと、逃げようとする1人をもう1人が引き止めていた。
『(まずい)』
シェイドは直感的に感じた感情に素直に従うべく、踵を返そうと足を引くと、
「待て!」
3人の内の1人がこちらに駆け出した。
『(うわあああああああ)』
シェイドはいつの間にか恐怖を覚え、走り出していた。
“個性”を使えば一瞬で撒けるが、そんな事も忘れてシェイドは走った。
「待ちやがれ!」
『(怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い!!)』
後ろを確認する余裕も無く、行く当ても無く、川沿いにシェイドは走る。
時々背後から爆発のような音がする。彼の“個性”だろうか。
「----!----!ま----こめ!」
追っ手が何かを言っていた気がするが、シェイドには届かなかった。故に、気がつけなかった。
いつもなら、増えた気配には敏感に反応する。
しかし、彼女の心は恐怖が支配していて、他の事に気が回り切れていなかった。
『(!!)』
土手を滑り降りて目の前に現れた、赤髪の青年に進行方向を遮られる。
『(こっちもか!)』
すぐ横の土手に登ろうとしたが、金髪に黒メッシュの青年が陣取る。
『(って事は………)』
背後には砂色の髪をした青年が立つ。
「はー、久々に全力で走ったあ……」
「君、足速いんだね」
「やっと止まったか………」
シェイドは見知らぬ男3人組に包囲された。