第5章 縁は異なもの味なもの
舗装なんかされていないでこぼこの道を、あてもなくひたすらに駆けずり回る。
待ってるって言うからには何処か近くにいるんでしょ、なんてごちながら。
飛ばされた時にはいつも通りの普段着と、履き古したスニーカーを身にまとっていた。
よもや部屋着とか、スーツとパンプスじゃなくて良かったな、なんて考える。
果てしなく広く、向こうの方まで見える青い空は、元いた世界とは違うのだと悟るに十分だ――
小さく黄色い花が咲き乱れる原っぱや、鬱蒼と茂る竹藪、街道にひっそりと佇む茶屋なんかを横目に…時折疲れて歩く、けれど気が急いて、立ち止まってはいられない。
(大きな声で政宗って呼んだら、あの角から現れてくれないかな)
それほど、彼は私の中で偶像化されていた――
まるで困った時には必ず助けてくれる、ヒーローのように。
――でも、
(でも、今度は私が政宗を見つけたい)
夢の中で見た、幼い時の努力をねぎらってあげたい。
そんな貴方が好きだと、今の彼に、伝えたい。
そうして決意新たに、また私は走り出す。