第1章 チェックメイトの前夜(徳川家康・こじさくコラボ)
「それ」に気付いたのは、昨日の夜半の事。
なかなか寝付けず、布団に入ったは良いものの、何もせずまんじりとしていた。
漂う暗闇と静寂の中、聞こえるのは自分の鼓動と息遣い位――
そんな事を思った、まさにその瞬間だった。
(誰か、見回りかな)
ぎし、と床の軋む音。
段々とこちらに近づいてくる。
(こんな夜中に…ご苦労様です)
気づいてしまえば、もう気になって仕方がない。
暫く耳を澄ましてその音を追う内に、それは突然ぱったりと止んだ――
(あれ…私の、部屋の前?)
その時、ふと気付く…
見回りなら、灯りを持っていないと意味が無いだろうに。
襖の隙間からも、全く光は漏れ入って来ない…
そして次の瞬間、がたり、と襖に何かが触れた音。
(…ひっ、)
思わず息を呑む。
そこにいるであろう「誰か」に聞こえないよう、手で口をきつく塞ぎ。
布団の中に潜って、空いた手で膝を抱き、目を閉じる――
***
「って事があったの!いえやすぅーー!!!」
「…そう。
そんな夜半に見回りは…まぁ、無いだろうね」
次の日、私は急いで家康に泣きつく。
臨場感たっぷりに説明したのに、家康は怖がる様子もなく。
じっと何かを考えている様子だった。
「怖いなら、俺の御殿に来てもいいけど…
それじゃ、根本的な解決にならないね。
俺が今晩千花の部屋に泊まって、様子を見るよ」