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卑しき狗の愛憎

第2章 予想通り


「さて、今日集まって貰ったのは"紫の上"の事についてだ。皆も知っての通り、私は彼女の後見人であり、ゆくゆくは私の後釜として首領の座に就いてもらいたいと思っていたのだよ。まぁ、この件は1度"紫の上"本人から断られてしまったがね。」
顔の前で組んだ手の上に顎を乗せて森が話し始めた。
首領専属の給仕たちが、幹部たちの前に置かれたそれぞれの、滑らかな象牙のようなカップに真紅の雫を注ぎ込む。ほのかな湯気が立ち上がる。
幹部たちは思い思いに、紅茶に砂糖やミルクを入れながら、首領の言葉を聞いていた。
「しかし、ここにきて太宰君が幹部として頭角を現し、いつの日にか私の寝首を搔いて首領の座に就くだろうという事も考えられた。」
森は組んでいた手を解き、カップを手に取った。
香りを楽しみ、一口含むと続けて、
「どちらも素晴らしい実力と構成員達からの崇敬を集めている。そこで私は閃いたのだよ!ならば2人を首領の座に据えれば良いだけのことだと!」
と再び妖しげな笑みを湛えて言ったのだった。
「鴎外殿、その考えは、妾とそなたらポートマフィアとの間の盟約に反してはおらぬか?妾は首領にはならぬ。あくまで妾は、そなたたちポートマフィアから受けた恩に報い、盟約の元にこの場に居るだけであるぞ?」
森の言葉に晶子は、怪訝な声で異議を唱えた。
正面の太宰が、訳知り顔でウィンクを飛ばしてきた。
「太宰、何か知っておるのか?」
晶子は少し苛立ったように太宰に尋ねた。
「まぁまぁ、落ち着かれてはどうですか、先生?」
とにっこり微笑んで晶子を窘めた。
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