第2章 予想通り
本部、それは、厳重なセキュリティと黒服に銃器を所持した無数の構成員により守られたポートマフィアたちの牙城。その最上階、そこにその人は居た。
「エ~リスちゃ~ん!ねぇ、お願いだよ、今だけだから!折角"紫の上"が帰ってくるんだよ?君も大好きな"紫の上"だよ?きっとエリスちゃんが可愛いこのワンピースを着てお出迎えしてあげたら"紫の上"は、喜んでくれると思うんだ。ねっ、お願いだからさぁ~?」
といつもの様に、首領・森鴎外は晶子の帰還を言い訳にエリスに着せようと、これでもかというくらいフリルとリボンの付いたお姫様のようなワンピースを持って追い掛けましていた。
「イヤよ、リンタロウ!晶子に褒められるのは嬉しいけど、それを理由にして着せようとするリンタロウは気持ち悪いし、卑怯だわ!」
と部屋の中を走って逃げるエリスは、森の言葉にこう答えた。
首領の部屋の警備を勤めている黒服の構成員が無線で、晶子達の到着の連絡を受けた。
構成員の男は、この、ポートマフィアの首領らしからぬ森の様子を目の当たりにし、上手く伝えるタイミングを見計らっていた。
しかし、晶子達が到着したら直ぐに知らせるようにと言われていた為、わざとらしくゴホンと咳払いをした。
「首領、"先生"が到着しました。」
その言葉に何事もなかったかのように森は首領然として、警備の構成員に話し掛けた。
「流石は"先生"。お早いお着きだ。お茶会«ティーパーティー»の準備は抜かりないね。お待たせせず、居間«リビング»にお通しするのだよ。勿論、幹部は揃っているだろうね。」
「はい、首領。抜かりありません。太宰様を除く五大幹部の皆様はもうお揃いです。」
その言葉に莞爾とした森は、
「さぁ、エリスちゃん!"紫の上"がお待ちかねだよ!」
と、表情を崩し、いつもの鼻の下の伸び切った様子でエリスと手を繋ぎ、幹部たちの集まった居間«リビング»へと向かった。