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卑しき狗の愛憎

第3章 憎悪と恩寵と思慕


3分が経った。それぞれのチームは、別々の入口からフィールド内に足を踏み入れた。芥川のチームが選んだ入口は、広いエントランスのような空間に出た。勿論フィールド内は暗い。黒服の1人が芥川に問い掛ける。

「芥川さん、どのような作戦で行きましょうか?」
「ふん、2度も言わせるな。貴様らは、僕の後ろに下がっていろ。前に出ればその首が落ちると思え。余計な事はしなくていい。」
芥川の心中には、ただ晶子を斃すということしか眼中になかった。芥川の一辺倒な答えに困った黒服は反論を唱えた。
「然し、教官の晶子様は、今回の訓練は能力を持たない我々一般の構成員が、未知の異能者に対する時の対応を教官殿はお知りになりたいのではないでしょうか…。」
的確に晶子の意図をその黒服の新人は捉えていたが、その事が更に芥川の苛立ちに油を注いだ。芥川は、何故わざわざ異能力者でもない只の黒服達を"守りながら"戦う必要があるのか、実際の現場など異能力の無い者が出る幕などないのだと思っていた。今回の訓練がそうした"弱者"のためであり、そんな分かりきった事をわざわざ指摘された事が許せなかったのだ。

エントランスの先にある観音開きの扉の方へ慎重に足を進めていた時だった。唐突にその扉が開いた。芥川は身構えた。一瞬身構えるも、扉の先も暗闇のように黒服達には感じられていた。しかし、芥川はそこに只ならぬモノを感じ取って殺気を放った。
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