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卑しき狗の愛憎

第3章 憎悪と恩寵と思慕


ポートマフィアの地下訓練施設、そこには射撃訓練場をはじめとして、体術などの稽古を行う道場、実戦を想定した訓練のためのフィールドなどが、揃っている。これだけの施設を見るだけでも、ポートマフィアが如何に強大な組織であるかが伺えるだろう。

今日の訓練は、フィールドで行われる実戦訓練だった。特に屋内での戦闘を想定して、フィールドはパーテーションで仕切られ、さながら巨大な迷宮のようになっていた。フィールドの一角のスペースには、既に五大幹部の尾崎紅葉とその配下の訓練に参加する構成員達、中原中也と彼の元に配属された数名の新人達が集められていた。
「紅葉姉さま、中也、久しぶりだな。今日の訓練の教官、しかと務めさせて貰うぞ。宜しく頼む。」
と晶子が声を掛ける。
「晶子様、久しぶりじゃのう。今日は宜しくお頼み申しんす。それから、先日の太宰との婚約、めでたいことでありんすなぁ。」
紅葉は晶子にフフッと微笑みかけた。
「はぁ!?おい、手前ェ、晶子、あの青鯖と婚約ってどういうことだよ!!」
と中也は心底驚いた様子で尋ねた。
「ああ、この話はまだ五大幹部以下には内密であったのだなぁ。ふふっ、何も驚く程のことではなかろう、中也。全ては首領のお達しじゃ。」と紅葉は、中也に笑いかけた。
「ああ、なるほどな…。そもそも手前は、結婚なんてしないと思ってわ…。しかし、首領の命令とは言え、手前が承諾するなんて一体どう言う風のふきまわしだよ…。」
中也は、しみじみと晶子の事を見詰めていた。
「まぁ、そんな事より今日は久しぶりに手目とやり合えるワケだ。」
中也がニヤリと笑いながら、指を鳴らした。晶子は、中也の結婚しないと思っていたという言葉に一瞬どきりとしたが、それを振り払うように妖艶に笑う。
「フフッ、まぁ、先ずはそなた達の配下と訓練せねばな?ああ、あと、今日は太宰から芥川を借り受けた。一緒に訓練に参加する、宜しく頼むぞ。」
晶子が中也にそう告げると、芥川は先程までの晶子への殺意など無かったように紅葉と中也に挨拶した。
「姐さん、中也さん、宜しくお願いします。」
こうして訓練が始まった。
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