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卑しき狗の愛憎

第3章 憎悪と恩寵と思慕


本部に到着する。
「じゃあね、晶子。私は今日の会合の為に色々とやることがあるから、芥川君の事は頼んだよ。会合が早く済んだら、迎えに行くからね。」
太宰は、晶子の手をさっと取り、口付けをする。
「ああ、分かった。そなたも少しは真面目に仕事をしてくるのだぞ?」
晶子は、ひらひら手を振りながらさっさと去ろうとする太宰に念を押すように、彼の後ろ姿に声を掛けた。芥川は、少し恨めしそうな表情でお辞儀をして、太宰を見送った。

晶子は、芥川に向き直って、話し掛けた。
「さて、妾達も仕事へ向かうとしよう。確か聞いた話では、紅葉の所の構成員達と中也に付いた数人の新人達への合同戦闘訓練及び、戦術論の指導であったな?」
「はい、その様に首領から伺っております。」
芥川は淡々と応える。
「そうか、ありがとう。して、そなたは今日1日、妾に付いて勉強するよう、太宰から申し付けられたが、どうする?」
晶子は本部内にある訓練施設へ向かう為、エレベーターの前に進んだ。
「どうすると言いますと?」
芥川は、少しきょとんとした表情で晶子に尋ね、エレベーターの下へ向かう乗降ボタンを押した。
「折角勉強して来いと言われたのだ、訓練に参加してはどうかと思ってな?プールサイドで見学する病弱な坊やをするつもりは無かろう?」
と、晶子はニヤリとした。芥川は、晶子の、あからさまな挑発の、病弱な坊やという言葉にムッとした。勿論、最初から見学するつもりなどなかった。そして、この訓練でこの女の首を刎ねてやると心に誓い、晶子を睨み付けた。

「勿論参加致します。僕が貴女から教わる事などありませんし、もしこの訓練で僕が貴女にかすり傷1つでも負わせる事が出来たら、直ぐに太宰さんの所に帰して下さい。」
「おお、やる気になったな?その望みも、そなたが妾にかすり傷1つでも負わせる事が出来たら叶えてやろう。フフっ、今日の訓練、とても楽しみであるな。」
晶子は、コロコロと楽しそうに笑いながら芥川と共にエレベーターへと乗り込んだ。
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