第3章 憎悪と恩寵と思慕
少し肌寒いなと思い、再び目を覚ませば午前六時。結局、あれから二時間しか眠れなかったらしい。しかし、襦袢のまま、布団も掛けずによく眠れたものだと思った晶子は、今更ながら布団へと潜り込んだ。まだまだ朝だけは肌寒いような四月の初旬。春暁のような心地の良い朝は、あと数日くらいは先だろうか。そんな事を思いながらぬくぬくと冷えた体を温めた。もう少し眠っていたいと思ったが、この国、このヨコハマという街に戻ってきた以上は、ポートマフィアという業からは逃れられない。
晶子は体が温まると、再び睡魔に襲われる前に、うーんと伸びをして布団を除け、ベッドから降りた。部屋にある洗面用の桶に水を汲み、サッと顔を洗うと白衣と緋袴を纏い、離れの奥にある釣殿へと向かった。