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卑しき狗の愛憎

第3章 憎悪と恩寵と思慕


――、――様!
次はどの本を読んでくださるのですか?

今日は何をして遊んでくださるのですか?

――様、姉様!


晶子は、目覚めた。
そこは、蜻蛉御殿の図書室のソファの上だった。午前四時、太宰たちが帰ってからまだ1時間半ほどしか経っていない。しかし、一体私はいつの間に居眠りをしてしまったのだろうと晶子は思案した。懐かしくも、未だに彼女の心を締め付ける悪夢。最近は滅多に見ることもなかったのに。

帰って早々に洋行での様々な事を纏めなければと思い、作業に取り掛かったは言いものの、居眠りのせいで少しも進んではいなかった。仕方なしに、図書室の隣の自室に向かった。着物も脱がずに、そのまま作業をしていた自分に晶子は、苦笑いをした。帯を解き、着物を脱ぎ捨て、襦袢姿になった。今日はもう洋行での事を纏めるのは諦めよう、そう思うと晶子はベッドにバタンと倒れ込み、そのまま眠りについた。
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