第4章 名前
「名前を・・・呼んでも・・・いい・・?」
「呼べば?」
「呼んだら、返事・・してくれる?」
「するよ」
「リョーマ・・くん・・」
「なに?」
流れ出ていた涙は
あとからあとから
仲間を引き連れて
今まで、きっと強かったあたしを
泣き虫にさせてく。
「リョーマあ・・・っ」
「なに?」
それは
とっても、とっても
優しくて
甘い、甘い、声。
ちょっとだけ笑いながら
まるで
小さな子供を
あやすかのように
リョーマは
あたしだけのために
返事をした。
リョーマが
後ろから、あたしを包んでいるような
不思議な感覚。
「今度は・・名前・・呼んで・・?」
リョーマは
またふっと笑って
「泣き虫なうえに、欲張り」
もうあと30度振り返れば
彼が見えそうなくらい
声が近くて
必死に
本能と戦った。
「」
リョーマは
名前を呼んだ。
あたしの名前を
呼んでくれた。
「な、なに?」
返事をした。
リョーマが
あたしを呼んだから
返事をした。
「なにって、が呼べって言ったんでしょ」
そうだよね
あたしが呼べって言ったんだよね。
あたしの言うことに
リョーマが反応する。
リョーマ・・・くん