第12章 叛乱の終焉に
「何を、するんです…」
僅かばかりの抵抗の言葉を塞ぐように、中也は翠の唇を舐めて、舌を滑り込ませた。頰を掴んでいた手が、耳朶を経由して、後頭部を陣取る。絡み合う口内の感触を味わいながら、彼女を腕の中に閉じ込めた。
翠が中也を見詰める瞳が、堪らなく愛おしい。強く有能であろうと振る舞う彼女の、我儘で甘えたな本性が垣間見えた時、硬く蕾んでいた独占欲が、雪崩を打って咲き乱れる。其の瞳は中也だけに向けられるものだと、身体中の欲望が総動員で翠を捕らえようと邁進する。
彼女の首筋に顔を埋めて、熱く火照った身体を冷ますように、中也は深く息を吐いた。力を入れると折れてしまいそうな腰に手を回し、密着させるように抱き寄せると、翠の鼓動が伝わってくる。
「明日戻るように、指示があった」
先刻首領から預かった命令を口にしたに過ぎないが、口から飛び出た声音は、余りに切なかった。小競り合いは鎮圧し、翠の熱も引いた。最早此処に残る理由もないが、此の騒動を終えて組織に戻った時、翠はもう組織の一員ではなくなっているだろう。
翠の心音を聞く中也に、片付けが終わるまでは今暫く身を寄せる事を伝えて、翠は困ったように笑った。