第11章 禿山の一夜
いっそ憐れに思えるくらいに、中也の制裁は過激だった。一夜、また一夜と過ごす度に、関連企業は凄惨な最期を迎えていった。今宵は何処が禿山かと、戦々恐々とする会社たちの様子が、仮宿で過ごす翠の耳にも聞こえる程だ。
余りにも尾崎の影響が著しい集団に対しては、翠が狐を連れて訪れることもあったが、中也は翠が前線に参加することを好まなかった。組織幹部が愛人を連れて地均しをしていると、扇情的な噂が実しやかに流れ始めたが、強ち間違いでもない上に、噂の流れから情報源を特定し、罠を張る足場になる為、翠は其れを大変重宝した。一方中也は心外だ侮辱だと大変憤慨した。
「手前、自尊心はねェのかよ」
あらぬ噂が縦横無尽に飛び交う現状に、中也は呆れて下唇を突き出した。翠自身が噂に尾ひれ背びれに目玉とエラまで付けて、情報を操る様に、納得いかない顔をする。其れが余りに子どもらしい仕草で、翠は苦笑し、言い聞かせるように中也の頰を撫でた。
「貴方が私を認めている。其れだけで充分です」