第5章 pavane
「はぁあああ…!!!」
スマホが鳴りだす直前で、ずっと画面と睨み合っていた私は自らアラームをoffにした。
溜息とも呼べない、大音量の呻き声をまた吐き出しながら…
嫌々ながら、開店のためシャッターを押し上げる。
高く南の空に上がった太陽の光が、寝不足の目に痛い。
(…なんで、あんな事したんだろ。触る、とか、)
昨晩の一件を思い返すだけでぶわっと顔面に熱が集まって来る、その繰り返し。
お陰で殆ど寝れていない。
皆に合わす顔が無いように思えて、いつもなら報告がてら立ち寄るスラムにも近付けていない。
心配させたくなくて、シンにメッセージだけ送っておいたけど…タイミングが良いのか悪いのか、忙しいようで返信はない。
返信が無いことにほっとするなんて、どうかしてるけど…
初夏に差し掛かった陽気のせいで、外の皆も暑そうだ。
顔が赤くなったくらいじゃ誰も気にしないだろう、と自分に言い聞かせる。
暫くして時計が正午を刺し、わらわらと珈琲を求めワゴンに集まってきてくれるお客さん達。
無意識にあの人の姿を探している自分に気付き、勢いよく首を振った。
そう、探しているのは決して会いたいからではなくて、その逆なのだから…
ぎゅ、と誰にもバレないように、カウンターの下で強く手を握る。
いつもなら、そろそろ刑事さんがお取り巻きを引き連れてやって来る時間だ――